「【NITSカフェ】アクティブ・ラーニングを考える~深い学び、その具体に迫る~」沖縄開催レポート

教職員支援機構では令和元年7月13日に、「【NITSカフェ】アクティブ・ラーニングを考える~深い学び、その具体に迫る~」を沖縄県にて実施しました。
当日は沖縄県の教員を中心に、121名が参加しました。

國學院大學の田村学教授による講義1「新学習指導要領で期待される深い学び」のあと、パネルディスカッションを行いました。

講義1「新学習指導要領で期待される深い学び」

講師
國學院大學 教授 田村学

今回の学習指導要領改訂では、「どのように学ぶか」にこれまで以上に注目することとなりました。講義では、この「どのように学ぶか」のキーワードとなっている「主体的・対話的で深い学び」において、最も分かりにくい「深い学び」を中心に考えていきました。

いくつかの事例で「深い学び」の子どもの姿を見ていくうちに、「深い学び」とは、知識・技能をつなぐ、あるいは関連づけるというように考えられることが分かってきます。

そして、後半には、「深い学び」を実現する授業改善として、子どもたちの学びを見取る教師力の熟達化や、「深い学び」を促進する思考ツールの利用、授業の終末の丁寧なリフレクション(熟考)について考えていきました。

パネルディスカッション(パネリストによる事例発表~ディスカッション~まとめ)

コーディネーター
國學院大學 教授 田村学
パネリスト
長野県教育委員会 指導主事 谷内祐樹
福岡県立香椎高等学校 主幹教諭 山本拓史
教職員支援機構 研修協力員 宮迫隆浩

まずは、3人の事例発表者がアクティブ・ラーニングの取り組みのプレゼンテーションを行いました。

①事例発表1「“新たな学び”のススメ方」

福岡県立香椎高等学校 主幹教諭 山本拓史

事例発表1/3「新たな学びのススメ方」

トップダウンで全体像や理念を分かりやすく示し、ボトムアップでは、授業参観や職員研修といった既存の取り組みを活用しています。活き活きと生徒が学ぶ姿をめざし、県全体で新たな学びに取り組んでいます。

②事例発表2「信州型ユニバーサルデザインで学びの改革を支援します」

長野県教育委員会 学びの改革支援課 指導主事 谷内祐樹

事例発表2/3「信州型ユニバーサルデザインで学びの改革を支援します」

全ての子どもが自分らしく学ぶことのできる授業づくり、学級づくりの基盤となる内容を、県の先生方と共に創り上げていこうという理念のもと「信州型ユニバーサルデザイン」を策定しました。授業を見取るためのワークシートや校内研修用の動画をHP上で公開しています。

③事例発表3「これから求められる授業研究」

教職員支援機構 研修協力員 宮迫隆浩

事例発表3/3「これから求められる授業研究」

今まで教師の活動中心に見がちだった授業研究を、実際の授業検討会の映像事例を交えながら、子供の発言に注目して行おうと提案をしています。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは会場全体で語り合い、率直な質問や意見が飛び交いました。
その一部をご紹介します。

質問者:パネリストの発表のなかで、子供側に立って授業を見取ろうという話が出ていましたが、そのポイントを教えて欲しいです。

宮迫:ポイントは2つあります。1つ目は参観者の立ち位置です。教室の後ろではなく側面や前に立って、子供の顔をよく見るようにしてください。そうすると子供たちの集中具合がよく見えて来ます。
2つ目はまずはたくさんメモをとることです。子供の様子を逐一みて、たくさんメモをとってください。そうすれば必要なことが分かってくるかと思います。

山本:昔は私も教室の後ろに立ち、ワークが始まるとどこかの班にいって聞き耳を立てていました。教室や廊下の前のほうに立つと、表情がよく見え、子供たちの集中具合もよく見えます。また、研究会の前後の雑談の場でも、子供の動きについて、どんなところに注目したか問いかけるようにしています。

質問者:授業研究をすると、どうしても教師の働きかけをメインに見てしまいます。子供中心で見るようにと言われても難しく感じますが、どうしたら良いですか。

宮迫:授業研究会のとき、教師の働きかけについては話し合うべきだと思います。でもまずは子供の学びを追っていって、子供の考えが大きく変容したところ、子供の考えが変容してほしかったところをポイントにして、指導性はどうだったのか、どのような代案があるのか、ということについて話すことが重要だと思います。教師の指導性ありきで語ってしまうと、教材論のぶつかり合いになりがちです。
まずは子供の学びを見据えて、そしてその変容を見取って、指導性を語るのが良いと思います。

田村:子ども中心=子どもにやりたい放題させるという話ではありませんし、先生方の指導を制限している訳ではありません。
でも指導するとき、子どもたちの様子を確認していなければ完全に一方的になってしまうということだと思います。

質問者:実際にアクティブ・ラーニングをする前には基本的な知識がなければどうにもならないと思っています。学力が高くない子どもにはどのように深い学びを感じさせることができるでしょうか。また、グループワークをすると、班によってばらつきがでてしまい、全員がアクティブ・ラーニングを達成出来たと言えない状況が続いています。

谷内:子どもをよく見ると、自分から声を出せない子や板書がすぐ書き写せない子がいます。そういった子にフォーカスして授業を組み立てることが大事だと思います。

山本:それぞれの達成する目標が異なっていてもいいと思います。一人一人でなくても、グループの目標設定をしたらどうでしょうか。
私も、日本史の授業で資料の読み取りをする場合、学習度に応じて、古文の書き下しを渡す子も居れば原文のまま渡す子もいます。個人差に対応しています。

最後に、田村教授からこのようなまとめがありました。

「アクティブ・ラーニングは、これまでやってきたことをひっくり返す話ではありません。
日本の先生たちは優秀で、こんなにたくさん人口がいるにもかかわらず総じて子どもたちの学力が高いという結果も残しています。
また、子どもたちにしっかり身につけさせようと思っても、学び手が本気にならなければ、本当に身につけさせることはできないということを感じていると思います。
そういった子ども達を本気にさせる方向にどう改善していくか、こうやって集まってくれた方は全国の新しい授業作りをしてくれるキーパーソンだと思います。
この学びをここにとどめずに、学校や地域に広めてほしいです。」

講義2「学習指導要領の読み解き方」

講師
國學院大學 教授 田村学

学習指導要領の読み解き方:校内研修シリーズ No.63

学習指導要領の改訂の最重要のポイントは、何ができるようになるか、子ども達が社会で生きていく上で使える力を身につけていこうということです。
そのために、「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「学びに向かう力・人間性」この3つの資質能力の育成が目指されることになりました。
この点から、学習指導要領がどのような記述・構造になっているのかを、教科の横の繋がりに着目しながら解説しています。

「【NITSカフェ】アクティブ・ラーニングを考える~深い学び、その具体に迫る~」は、今後、11月2日東京、11月9日大阪で開催します。新しい試みとしてライブ配信も予定していますので、ぜひ、ご参加ください。

関連動画

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