NITSニュース第47号 平成30年6月29日

外国人児童生徒等の日本語教育

東京学芸大学 教授 齋藤ひろみ

外国人児童生徒等のための日本語指導が、平成28年には文科省省令改正により「特別の教育課程」として編成・実施できるようになりました。正規の教育課程として認められるようになったのです。

さらに、新指導要領(平成29年3月公示)の総則には、「特別な配慮を必要とする児童(生徒)への指導」項目に、「学校生活への適応や日本語の習得に困難のある児童に対する日本語指導」が明記されました。この施策・制度の転換により、外国人児童生徒等教育・日本語指導は学校教育の教育課題だという認識が広がっています。

一方で、学校の指導は子どもが来てから手探りで始めるという状況にはまだ変化はありません。それは、この教育領域の専門性をもつ教員がわずかしかおらず、事前に組織的に対応する体制を学校がつくれないことが大きな要因です。この点で、教職員支援機構で実施される「外国人児童生徒等に対する日本語指導指導者養成研修」は、非常に貴重な研修です。

また、先生方にとっては新たな課題に挑み、異なる領域の専門性に触れ、教師として形成してきた「当たり前(前提や準拠枠)」を問い直す契機ともなるのではないでしょうか。

言語・文化の多様な児童生徒に正面から向き合い、奮闘し、その子どもの日々の変化に目を見張る、そんなとき、教育の原点があるよう思うと、先生方が語るのをよく耳にします。教師としての力量形成の過程であると同時に、「キャリア」に新たな扉が開かれるトキなのだと思います。

この度の研修で、先生方が各々の地域の状況と子どもの実態、そしてご自身の取り組みや悩みについて話される姿に、私はそうした瞬間を感じ、同時に先生方と共振しながら、私も何かしらの成長をしているに違いないとも思いました。

安倍政権は「骨太の方針2018」で、「新たな外国人材の受け入れ」を打ち出しました。家族の帯同を直に認めたわけではありませんが、今後、学校現場の多文化多言語化はさらに進むことでしょう。

先生方があの研修で気づき、得たことを資本に、是非、周囲の子どもたち、同僚の先生方、保護者の方、地域のコミュニティを巻き込んで、やってくる外国人の子どものみならず、学校全体のダイバーシティを進めていただけたらと思います。

最後に、私が研修の講義で紹介した、広島市立基町小学校の卒業生(中学生)の声を掲載します。子どもたちの「伝えたい・学びたい・喜びを分かち合いたい」という希求に応え、かれらのライフコースを伴走しながら、ことばを介在させて「学びの連続性」を保障する教育を、私は日本語教育の専門家として、先生方と共に、目指したいと思います。

小1の時、毎日のように泣いていた。日本語がわからなくて、もどかしくて・・・。泣けば助けてもらえた。3年の時、担任の先生が、なかよし教室での勉強を勧めてくれた。うれしいことが2つ。言いたいことを理解してくれる友達ができた。
楽に話せるようになった。中学生になり、国語ではわからない言葉が増え・・・先生の話が分からない、慣れていない人とは誤解が生じることもある。だけど、自分の気持ちを自分の言葉で伝えたい。たくさんの人とつながりたい。