アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:横浜市立戸部小学校
教科等:6年総合的な学習の時間(平成28年12月)
単元名:とべまちSMILE防災隊

地域に対して夢を持ち、その実現に向けて粘り強く取り組む力を伸ばしたい

  • 自分と結び付ける
  • 協働して課題解決する
  • 自分の考えを形成する

実践の背景

  • 実践校は創立137年を超えた、各学年2学級の伝統のある小学校です。
  • 研究主題を「夢を持ち、夢を実現する子供~『つかむ・ふかめる・ふりかえる』1時間の授業づくり~」と設定し、「地域に対して夢を持ち、その実現に向けて粘り強く取り組む資質・能力」、「夢の実現に向け、課題を見出し、解決に向け構想を立て、情報を収集し、分析的に思考し、判断し、表現する資質・能力」、「他者と対話を通して双方向的に関わり、信頼し合いながら力を合わせて取り組む資質・能力」、「自分自身の成長や変容に気付き、よりよい夢を描こうとする資質・能力」の育成を目指しています。

授業改善のアプローチ

  • これまでのフィールドワークや体験学習と関連付け、子供たちが自分にできることを考え、取り組んでいけるようにします。
  • 子供たちが単元名にこめた「SMILE」=「地域の人が、もしもの時に、少しでも笑顔になれるように…」という思いの実現に向けて、真摯に、前向きに地域の防災と向き合っていけるようにしています。
  • 児童は、地域の防災に関する学びを通して、地域の役場とも関わる中で、役場からこのような避難所体験プログラムを広めていきたいという依頼を受けています。

単元づくりのポイント

目標

「もしもの時(=大きな災害時)に地域の役に立ちたい」という思いの実現に向けて、災害時に地域のために自分たちにできることについて考え、発信することを通して、自助・共助の視点から、自分自身が、また、地域の一員としてできることややらなければならないことがあることを知り、今後も、いつ起こるかわからない災害と向き合い、自分にできることを考え、取り組んでいこうとする。

展開

「自助」を確かにするために役立つ情報は?(全25時間中第15時)

1

自分たちの情報は自助の視点から十分と言えるか?

  • 自分たちの備えの分析結果等の情報を見直し、その有用性を検証するための計画を立てる。
2

自分たちで計画して、避難所体験をしてみよう。(本時)

  • 避難所体験を計画し、体験を通して自分たちの備えが十分か、また何が問題か検証する。
3

自分の身を守るために必要なことは何だろう?

  • 体験を通してわかったことを整理し、今後の取り組みについて考える。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

避難所訓練で取り組んだ「区割り」のプログラムのメリット、デメリットを話し合うことを通して、時間やコスト、得られる情報の重要性、もしもの時に対する心構えの変化等、多面的な視点から各内容の必要性について考え、よりよい計画を整理していこうとする。

授業場面より

  • ①避難所体験をもとによりよいプログラムについて考える

    避難所体験をもとによりよいプログラムについて考える画像

    児童は、自分たちで計画した1泊2日の避難所体験を、1週間前に学校の体育館でしています。その体験を踏まえ、避難所体験をする際のプログラムをよりよくし、地域に広めるために必要なことを時系列に見直しています。
      本時は「避難者カード」「体育館の区割り」の2つに絞って考えていきます。
      例えば、「避難者カードを書く訓練の必要性」について考える際は、「避難所カードを書く流れを確認するだけで十分」という意見に対し、「避難所カードにどういうことを書くか、知っておくことが必要」などの意見を交わすことで、学級としての納得解を探っていきます。
    互いの意見を聞き合うことで、意見が変わる児童がいます。ある児童は、「最初、避難所カードの体験は不必要と考えていたが、Aさんが言った『本当のときはパニックになっているから、想定して訓練することが必要』という意見を聞いて、不必要という考えが必要に変わった」と発言しました。
    教師は児童の意見を、黒板に「必要」「不必要」の両面から整理していきます。

  • ②被災者の実体験と比べて考える

    被災者の実体験と比べて考える画像

    結論がある程度整理できたところで、進行役の児童が「次の話題に進んでもいいですか」と発言し、「体育館の区割り、場所を決めることの在り方」について考えていきます。
      児童は「場所決めを実際に体験することは必要。目安がわかっていたら本番でつくれる」、「養生テープを使えば、5分で仕切れる」、「体育館の端は寒かった。真ん中に集まったほうがいいと地域の方も言っていた」など、避難所体験での経験を踏まえて発言します。
      ここで教師は、以前熊本地震で被災され避難所を運営した先生からいただいた手紙を読み直すように働きかけ「手紙で本当に伝えたいことは何か」を考えるように促します。自分たちの避難所体験と被災者の実体験とを比べて考えることで、議論を深めていきます。
      児童は「避難者は一斉に体育館に押し寄せてきて、対処できなかった」、「避難して最初に休憩したところがそのまま自分の場所になってしまった」、「実際は仕切り直して、しっかりした区分けにしたかったのではないか」などと、手紙から読み取ったことをもとに、意見を交わしていきます。

  • ③意見を整理する

    意見を整理する画像

    議論が深まってきたところで、教師は「出された意見の中でこれが大事だと思うところに名前カードを貼ろう」と自分の意見を可視化するように促します。その結果、多くの児童が大事にしたいと考えている「避難所カードを書くこと」や「場所決めのための区分けをすること」が学級全体で共有できます。
      児童は「体験で避難所カードを書くと緊張感もあり、避難所カードの重要性も分かる」など、プログラムをよりよくするための視点を絞っていきました。

  • ④必要感を持って振り返り、次時につなげる

    必要感を持って振り返り、次時につなげる画像

    教師は「大事にしたい視点が見えてきたから、さらにこうしたいということも含め、振り返ろう」と児童に働きかけます。
      児童は「避難所カードに何を書くかを事前に知っておくと、普段から住所や電話番号などを意識できる」、「実際の避難では避難所カードを渡すことも難しい。書くものも持っていない。誰が書いて、書いていないかもわからない。そういう状況が考えられるから、訓練で避難者カードを配ったり、書いたりすることが必要である」など、避難所体験や本時の議論を踏まえた振り返りをし、学習活動を意味付けていきました。
      このような学びを通して、地域に対して夢を持ち、その実現に向けて粘り強く取り組む力などの育成にもつながっています。

報告者:研修協力員  木野村