アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:東京都立国立高等学校
教科等:1年理科(生物基礎)(平成29年6月)
単元名:生物の特徴

習得・活用の学びの過程の中で問いを見いだす力や、知識を関連付け生物への深い理解に向かう力を育みたい

  • 振り返って次へつなげる
  • 思考を表現に置き換える
  • 知識や技能を概念化する

実践の背景

  • 実践校は「清く 正しく 朗らかに」を校訓とし、自由闊達な校風の下、文武両道の理念の実現を目指している学校です。
  • 生徒の課題発見・解決能力や表現力を高め、知性と教養溢れる人生の基礎を築けるように、生徒の「思考」を助け、支える授業を常に追求し続けている学校です。

授業改善のアプローチ

  • 単元全体を通して、「問いを見いだすことや知識を関連付けながら生物への深い理解に至っていくこと」を目指しています。
  • 習得・活用の学びの過程を意識して単元を構成しています。単元の前半では「進化」「光合成と呼吸」「代謝と酵素」について、教科書、ワークシート等を活用し、内容の理解を図っていきます。単元の後半では、前半で得た知識をを活かし、グループごとにプレゼンテーションを行います。プレゼンテーションを通して、単元全体で学んだことのつながりを実感し、生物への深い理解を目指していきます。
  • 授業の終末に振り返りの時間を設定し、その時間でどんな問いを見出したかを考えていきます。
  • 「問いを見出す力」を一層育んでいくために、単元に数回「観察実習」を行っています。一単位時間で、観察を通してグループで問いを見出し、解決策を考え、最後にグループごとに発表します。単元で「観察実習」を数回行うことで、「問いを見出す力」を鍛えていきます。一単位時間での問題解決の過程を経ながら、生物の共通性や多様性の視点で考える力も育んでいくこともねらっています。

単元づくりのポイント

目標

  • 生物の共通性と多様性について関心を持ち、意欲的に探究しようとする。
    【関心・意欲・態度】
  • 生物は多様であっても、共通の性質や構造があることを考察し、導き出した考えを表現している。
    【思考・判断・表現】
  • 生物の共通性と多様性について観察、実験などを行い、基本操作を習得するとともに、それらの過程や結果を的確に記録、整理している。
    【観察・実験の技能】
  • 生物は多様でありながら共通性を持っていることを理解し、知識を身に付けている。
    【知識・理解】

展開

第1, 2時

進化

第3時

春を探そう(観察実習)

第4, 5時

代謝と酵素

第6時

顕微鏡の使い方(観察実習)

第7, 8時

光合成と呼吸

第9, 10時

細胞の観察(観察実習)

第11, 12時

生物の特徴についてのプレゼンテーション作成(①、②場面)

第13時

カイコから考える(観察実習)

第14時

生物の特徴についてのプレゼンテーション(③、④場面)

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

プレゼンテーションを通して、生物の特徴の「進化」「代謝と酵素」「光合成と呼吸」についての理解を深める。(第11・12・14時)

授業場面より

  • ①「何を中心にまとめていくか考えよう」

    「何を中心にまとめていくか考えよう」画像

    単元前半で「生物の特徴」の内容について得た知識を活用しながら、グループごとにプレゼンテーションを作成していく場面です。教師は生徒がはっきりと見通しを持って活動できるよう、プレゼンテーションでの留意点
    ●学習内容全体を関連付ける●何かに例えて発表する●グループでアイデアを出し合うを示しました。生徒は、①グループで教科書やノートを見返しながら学習内容を振り返っていきます。その過程でグループ内で対話を繰り返し、「自分たちが単元で学んだこと」を焦点化しています。②教師は、各グループの対話に耳を傾け、必要に応じて関わっていきました。生徒は教師とも意見を交流しながら、自分たちの考え、発表内容をまとめていきました。

  • ②「学習内容を整理するとつながりが見えてくる」

    「学習内容を整理するとつながりが見えてくる」画像

    自分たちの考えを整理しながら、学習内容を分かりやすく説明するための方法を考えていく場面です。教師は、生徒がプレゼンテーションの際にクリエイティビティを発揮していくために「何かに例えて」発表する留意点を確認しました。また、知識と知識の関連付けを図るために、ウェビング、KJ方等を紹介し、生徒の思考をつなげる支援を行いました。これにより、①生徒は学んだことの関連付けを図りながらまとめていきました。②あるグループは、「生物の特徴」を木に例え、進化と生物の共通性という観点を幹としてまとめました。生物の共通性とは生物である条件、・細胞でできていること、・エネルギーを利用して、エネルギー物質としてATPを利用すること、・遺伝情報を担う分子としてDNAを持っていることの三つがあり、それら関連付けられる知識を枝で示しました。その過程で、別々のことを学んでいるようで、実は一つ一つの個別の知識がつながっていることに気付いていきます。

  • ③「代謝と酵素の関係をこのようにつなげています」

    「代謝と酵素の関係をこのようにつなげています」画像

    プレゼンテーションを行う場面です。教師は、「時間の制限」「分かりやすさ」という視点を定めます。言葉を選んで発表することで思考が整理され、精緻化を図っていくためです。①あるグループは、「代謝は酵素によって化学反応が促成されるので、このようにつなげています」と知識と知識のつながりを木に例えて発表しました。また、別のグループは、充電式電池に例えて、②「ADPがリン酸と結合しATPに変わり、それが消費されるとまたADPになる。この関係性は繰り返されます。」とADPとATPのしくみを発表しました。何かに例えることや時間を区切ったことは、それぞれの知識のつながりを意識しながら、言葉を精選して発表する姿となって表れました。

  • ④「自分でつなげられていくと余計理解も深まる」

    「自分でつなげられていくと余計理解も深まる」画像

    終末の振り返りの場面です。教師は、本時及び単元全体を総括することができる時間を確保します。また、振り返りシートを用意し、「単元全体の学習内容の関連付け」、「対話を通してアイデアを出す」等自己評価ができるようにしました。また、振り返りをグループ内で交流し合い、単元を通して自分が身に付けた知識等今後どのように学びに取り組んでいきたいかを考えていけるようにしました。生徒たちは、これまでの学びについてじっくり考えていきました。「一見、別々のことを学んでいるように見えるけど、実はそれが全てつながっていて、自分でつなげられていくと余計に理解が深まります。」と知識と知識がつながると理解が深まるということを実感していくことができました。

報告者:研修協力員  佐藤