「NITSカフェ」キックオフセミナー 「教師の働き方改革 ―多忙化の改善に向けて―」開催レポート

教職員支援機構は、平成30年7月30日、「教師の働き方改革 ―多忙化の改善に向けて―」と題した参加型ワークショップ「NITSカフェ」キックオフセミナーを開催し、事前に応募があった教員や校長、教育委員会、教職大学院、民間企業など約60名が全国21都道府県から参加しました。

当日は、文部科学省による国の方針や今後の施策説明、全国各地で実践された事例の発表(10組)、東北大学の青木栄一准教授(中央教育審議会専門委員)による民間や海外の視点を交えた問題提起などのあと、参加者が所属や職種を超えて現場ならではの本音や実情を踏まえた意見交換。最後に、多忙化改善に向けて課題解決のアイデアなどを出し合いました。

ダイジェスト動画

「NITSカフェ」キックオフセミナー ダイジェスト

平成30年7月30日に開催した「NITSカフェ」キックオフセミナー 「教師の働き方改革 ―多忙化の改善に向けて―」の様子のダイジェストです。

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事例発表10組

29年度の第1回NITS大賞「多忙化の改善」部門エントリー事例など実際に取り組んだ活動を5分で発表しました。

スクラップ&スリムで多忙化改善:学校における働き方改革事例

思い切った重点化による業務精選を行い、3年間で50項目のスクラップ&スリムを実施。タイムカードを用いた業務の把握、保護者への丁寧な説明が必要となる行事の精選にも取り組みました。

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全員参加で業務改善:学校における働き方改革事例

校務分掌表をはじめ、各種規程や校務運営ルールなどを一冊にまとめたガイドブックを全員参加で作成。働く職場として学校を空間マネジメントしています。ICTの活用による校務改善にはトップダウンが必要と感じさせた事例です。

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ワークシェアリングの実施:学校における働き方改革事例

「プロジェクト」という柔軟な組織を活用し、業務改善の成果を出した事例。ゴールの設定とその共有が印象的です。分業とスケジュール管理による「助け合い」で業務の効率化(繁閑の差の是正)がなされました。

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毎日19時退勤の実現:学校における働き方改革事例

3年間にわたり教員の意識向上、業務のスピードアップを働きかけ、勤務時間の削減などに取り組みました。時間の把握は業務改善の基礎であり、グループウェアの活用、ミドルリーダーの活躍が効果的であることがわかる事例です。

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コミュニティによる学校業務支援:学校における働き方改革事例

コミュニティスクール(学校地域コーディネーター)を活用し、ボランティア、学校業務支援本部などへの業務の「つけかえ」をした好事例。若手教員が全国的に増える中で、年休取得日数の目標設定などは参考になる事例です。

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ペーパーレス職員会議の実現:学校における働き方改革事例

ICTを活用して「ペーパーレス」を職員会議、研修会議に導入。初期コストをかけても、その分のリターンが期待できます。単にルール設定だけではなく、それを受容させるための「人間関係の構築」も重要と気づかされる事例です。

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時間短縮にICTを活用:学校における働き方改革事例

教務の場面でのICT活用の好事例。生徒の実態を把握するためのミニテストの採点や集計に、マークシートと採点ソフトを活用して時間短縮を実現し、教材研究の時間を確保した事例です。他の教科、学校・自治体でも参考になります。

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事務職員を核に保護者も協力して集金業務を改善:学校における働き方改革事例

教員の負担になっている学校集金業務を事務職員などが改善しました。未納金を「生徒が持参」から「保護者が直接金融機関に振り込む」に変えるなど、学校のお金の流れを変革。全国的には公会計化が進んでいるが、単独の学校で取り組む際の会計面における業務改善の好事例です。

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教員のライフスタイルの充実へ:学校における働き方改革事例

教職員の心のゆとり、仕事のゆとりの2つの観点から、事前に定時退勤日を知らせるカード掲示をはじめ、会議の工夫・職員室モニターの活用・教科担任制の導入・ノー残業デーの完全実施などで生き生きと働ける職場に。

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「時間の長さ」より「多忙感」に注目:学校における働き方改革事例

時間の長短よりも、「児童生徒と関係がない」と感じる業務の多さに「多忙感」を感じていることをヒアリングで把握。データにもとづいたリーダーシップにより、業務改善を実施し、時間を産み出しました。業務の可視化の重要性が理解できる事例です。

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講演①

文部科学省初等中等教育局 佐藤人海企画官

働き方改革の諸動向について、業務の役割分担・適正化を進めるため、教職員等の標準職務が各教育委員会の学校管理規則に適切に位置づけられるよう支援を行うこと、文部科学省内に教職員の業務量を俯瞰し、一元管理する組織を整備し、新たな業務付加を伴う制度改正等の際に調整を行っていくこと、コミュニティ・スクール等の設置を促進していくことなどが説明されました。

講演②

東北大学 青木栄一准教授(中央教育審議会専門委員)

現在の学校を「職場として」、教職員を「社会人として」検証してみると、勤務時間を把握していない、ICT技術の活用が進まない、などの課題が浮かんでくると指摘。業務改善を進めるためには、「自分たちで気付いて自分たちで改善することが大切」とした上で、働き方改革についての取り組みを以下の4つに分類して説明しました。

また、マネージャー業務のワークスケジュールは、シフト表を組むだけではなく、繁忙期を察知し、繁閑の差を調整すること、学校の戦略的対応として、「即効性追求よりも人づくり」「社会人基礎力(顧客対応・接遇)の習得・強化」の重要性を指摘しました。

さらに、百貨店、航空会社、医療機関、旅行業など、人と直接接するヒューマンサービス、感情労働といわれる業界と福祉、教育、医療も同様の面があることに注目。そういった業界ではかなりシステマティックに教育を施しており、それが働く人を守ることにもつながっていることから、教員の働き方改革も、教育学や教育業界だけに頼ることなく進めるべきで、「生涯学び続け、成長していく」という本来の教師という職業像に戻るきっかけにできれば、と期待を語りました。

ワークショップ

下記は参加者から出された多忙化改善に向けての課題解決のアイデアの一部です。

「部活動を週休2日になかなかできないのは、休むと負けるのではないかと思っているから。みんなの『勝ちたい』という気持ちを考え、短時間で成果を上げている事例を共有するとよい」

「業務の効率化を、と言っても、先生たちは子供たちのためなら、と頑張ってしまう。教育の質を下げずに業務削減できるよう、業務アシスタントを雇用するなど、新たな対策が必要」

「校区、校種などを飛び越えて移動し、調整するコーディネーターが必要。学校や社会教育、福祉、企業などを渡り歩き、ボランティアなどすべての情報を現場に提供してくれる存在が必要」

「本来の教員の業務を優先させるためには、保護者の理解が必要。理解獲得のためには、学校単位ではなく、教育委員会と連携して進めることが不可欠」

プログラム

13時00分~13時30分
受付開始
13時30分~13時35分
開会挨拶(5分)
13時35分~13時50分
「学校における働き方改革の諸動向」(15分)
登壇者:文部科学省 初等中等教育局 企画官 佐藤人海
13時50分~14時50分
事例発表 5分×10組(60分)
14時50分~15時20分
まとめ・講義(30分)
講師:東北大学 准教授 青木栄一
15時20分~15時40分
休憩(20分)
15時40分~16時30分
ワークショップ「多忙化改善を進めるためには何が必要か」(50分)
ファシリテーター:独立行政法人教職員支援機構 次世代教育推進センター長 大杉昭英
16時30分~16時50分
発表(20分)
16時50分
閉会
16時50分~17時20分
交流会(30分)

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